写大ギャラリーとは

1923年に創立された東京工芸大学は、我が国で最も歴史と伝統のある写真教育機関です。その中でも、1975年に設立された写大ギャラリーは、国内外の優れた写真作品を展示・収集・研究する常設施設として、教育機関のみならず、我が国の写真の歴史を見ても、極めて先駆的な存在だといえるでしょう。

細江英公と写大ギャラリー

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開学当時のスタジオ(1927年頃)

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写大ギャラリーオープニング
細江英公初代運営委員長あいさつ(1975年)

写大ギャラリーを語るにあたっては、初代写大ギャラリー運営委員長であり、日本を代表する写真家である細江英公について述べなくてはならないでしょう。
1933年生まれの細江は、1954年に本学(当時:東京写真短期大学)を卒業しました。卒業後は、小説家の三島由紀夫を被写体とした「薔薇刑」(1963年)や、舞踏家の土方巽を被写体とした「鎌鼬」(1969年)など、肉体をモチーフにしたセンセーショナルな作品を発表し、若くして国際的に評価される写真家でした。2003年には英国王立写真協会から特別勲章を授与され、2010年には我が国の文化発展に対する永年の功績が認められて、文化功労者として選出されています。

1975年、第一線で活躍する写真家であった細江が本学教授に就任します。細江は写真教育に携わる条件として、本物の写真を日常的に見せられる場として、「オリジナル・プリント」を展示、収集するギャラリーの設置を提案しました。
 「オリジナル・プリント」とは、写真家自身により制作され、署名などが入れられた、写真家の最終的な表現媒体としてのプリントを指し、印刷物などでは感じられない、作者の息づかいまで伝えるものとして、絵画や彫刻のように、芸術作品の一つのジャンルとして、当時海外の美術館などでは展示・収集されるようになっていました。

 しかし、1975年当時、オリジナル・プリントを日常的に展示・収集する公的機関は、まだ日本国内にはありませんでした。細江は、写真教育の現場でこそ、「写真の素晴らしさ」「写真への愛と尊敬」を語る上で最も効果的な教材として、オリジナル・プリントを活用すべきだと考え、ギャラリー設立の重要性を主張したのでした。

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ウィン・バロック展DM(1975年)

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ウィン・バロック展(1975年)

そして1975年5月20日「ウィン・バロック展」を皮切りに写大ギャラリーは開設されました。
 ウィン・バロック(Wynn Bullock,1902-1975)は、1955年にニューヨーク近代美術館25周年を記念して企画され、その後38ヶ国を巡回し900万人を動員した世界規模の展覧会「ファミリー・オブ・マン(人間家族)」の巻頭に展示された作品「そこに光りあれ」(1954年)などで、世界的に知られるアメリカの写真家です。写大ギャラリーでの展覧会は、ウィン・バロックの日本で初めての個展となり、大きな話題となりました。

 以来、写大ギャラリーでは、「ウィン・バロック展」のように海外の著名写真家の初個展や、歴史的意義のある国内作家の写真展など、数多くのユニークな展覧会を開催し、会期中には作家本人を招聘して授業を行ったり、一般向けのトークショーなどを実施したりしてきました。
 写大ギャラリー設立当時、本学は東京写真大学という名称であり、略して「写大」と呼ばれていたことがギャラリー名の由来です。1977年に校名が現在の東京工芸大学に変更された後も、永年親しまれてきた「写大」という呼び名をギャラリーの名前に残し、現在に至っています。

 写大ギャラリーでは1万点を超えるオリジナル・プリントを所蔵しており、教育機関の付属施設としては、世界に誇れる所蔵作品数と言えます。
 これらの所蔵作品は、年間を通じて気温20度/湿度50%を保つ、写真専用に設計された収蔵庫に保管されており、それぞれの作品はデジタル・アーカイブ化され、学内の図書館などで閲覧できるようにしています。

 写大ギャラリーの1万点を超える所蔵作品の中には、ウィン・バロックを始め、アンセル・アダムスやエドワード・ウエストンなど、20世紀の世界的巨匠の名作や、W.H.フォックス・タルボットやナダールのような19世紀の歴史的作品など、数多くの著名写真家の作品が含まれていますが、その中でも、とりわけ重要な所蔵作品として、約1,200点の土門拳コレクションと、約1,000点の森山大道コレクションが挙げられるでしょう。


土門拳コレクションについて

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土門拳来学(1979年)

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左:土門拳、右:細江英公(1979年)

土門拳(1909-1990)は、「古寺巡礼」や「文楽」などの日本の美や伝統文化に関わる作品、また「風貌」など著名人のポートレート、そして「ヒロシマ」や「筑豊のこどもたち」に代表される社会的なテーマを扱った作品など、日本の写真史を語る上で欠かせない昭和の巨匠です。
 1978年、生前の土門拳自身の厚意により、1237点のオリジナル・プリントが写大ギャラリーに寄贈されることになりました。プリントは全て新たに制作することになり、収蔵が完了するまでに5年の歳月がかかりました。
 写大ギャラリーでは、1978年の収蔵開始以来、ほぼ毎年のように土門拳の写真展を企画しながら、写真教育に活用し、珠玉の作品を多数寄贈してくださった土門の恩顧に応えると共に、土門の偉業を後世に伝える活動を続けています。



森山大道コレクションについて

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森山大道展(1976年)

現代の日本を代表する写真家として1960年代より活躍する森山大道(1938- )。近年では、ニューヨーク、パリ、ロンドンなど海外の美術館でも大規模な写真展が開催され、世界各地で写真集が出版されるなど、森山の国際的な評価はますます高まっています。
 森山は大阪から上京した直後の1961年より、3年間ほど細江英公の助手を務めていました。1976年10月、かつての師である細江の呼びかけにより、写大ギャラリーで写真展を開催することになりました。その際に運び込まれた「にっぽん劇場写真帖」や「写真よさようなら」など、1960年代から1970年代における森山初期の代表作のプリント約1000点を、展覧会終了後に一括して収集しました。

 写真を収集する美術館や、オリジナル・プリントを売買する市場が存在しなかった当時の我が国において、基本的に写真集や雑誌などのための印刷原稿用として制作されたそれらのプリントは、ともすれば処分されたり、散逸したりしていた可能性もあります。しかし、それらを一括して収集したことは、当時の細江に先見の明があったとしか言葉がないでしょう。
 現在、森山初期の作品群は、その時代を象徴する先端的な写真表現として注目されるようになり、世界中の美術館などで展覧会や出版物として取り上げられています。
 そのような状況にあって、写大ギャラリーの約1000点の森山作品は、他に類を見ないほど、まとまった数と充実した内容を誇っており、森山初期の代表作をほとんど網羅している世界的に見ても貴重なコレクションといえます。


 このような所蔵作品は、日常的に写真教育や研究の現場で活用され、また一般の写真ファンの方々にも楽しんでいただけるように年間をとおして展覧会として公開しています。

施設概要

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写大ギャラリー40周年記念展(2015年)

東京工芸大学芸術学部 写大ギャラリー

住所:〒164-8678 中野区本町2-4-7 芸術情報館2F
電話:03-3372-1321 (代)
最寄り駅:地下鉄丸ノ内線/大江戸線 中野坂上駅下車 1番出口・徒歩7分
開館時間:10:00~20:00(会期中無休・入場無料)