展覧会概要

 今回の展示は「モノクロ印画紙と絵具の邂逅」をテーマにしました。単色写真に彩色する技法は150年前のダゲレオタイプ時代からあり、その後の鶏卵紙のプリントに彩色したものは日本では幕末の横浜アルバムなどでよく知られています。

 しかし、それらの彩色写真の目的は、いわば現実の色を絵具で再現する塗り絵のような方法であり、青空は青に、口紅は赤く、といった類いのものでした。

 アン・マリー・ルソーさんの作品は、あくまでも写真表現の領域を拡大させようとする試みであって、色のないモノクロ印画の塗り絵ではありません。しかも、それはモノクロ写真でもない、またカラー写真でもないもうひとつの写真的ビジョンを創造しようとする挑戦だと思います。

 これらの作品をみて何らかの刺激を受けてさらに新しい試みをしようとする若い写真家が誕生することを期待します。そしてルソーさんを乗り越えて可能性豊かな写真表現の世界に新しいページをつけ加えてください。