展覧会概要

この度、写大ギャラリーでは細江英公 ルナ・ロツサ オリジナルプリント展「夜明け前:20世紀末にむかって・1992~1996」を開催するはこびとなりました。

細江英公先生は本学の卒業生(29期)で、卒業と同時に写真作家として活動を開始し、今日までその作家姿勢を貫きとおしている数少ない写真家の一人です。「10人の眼」展やVIVOなど日本の現代写真を語る上で欠くことの出来ない活動の中心となる一方、「おとこと女」「薔薇刑」「鎌鼬」「抱擁」「ガウディの宇宙」など、多数の作品を発表しつづけ、日本はもとより海外の評価も高く幾多の賞を受賞しております。1988年には、それまでの作家活動を一望できる集大成展「細江英公の世界」展が、池田20世紀美術館をかわきりにスタートしました。この展覧会は国内をめぐり、現在アメリカおよびヨーロッパ各地の美術館を巡回中ですが、10年目の1998年に日本に帰って来ます。

こうした作家活動の一方で、写真ミュージアムの設立運動、重要な展覧会の企画など、写真の社会的地位向上のためにも力をそそぎ、1995年には、清里フォトアートミュージアム館長に就任され、その活躍が注目されております。また写真教育にも情熱をかたむけ、本学芸術学部教授として学生の指導にあたる一方、世界各地でワークショップを開いて写真をめざす世界の若者に影響を与えつづけております。

1993年3月、東京新宿のI・C・A・Cウェストンギャラリーで発表された「夜明け前-世紀末にむかって」展は、20世紀末の空気を「新しい世界へ目覚める前の、透き通るようなはかないひととき」と独特の時代感覚でとらえ表現していて、たいへん話題になりました。この展覧会はその後世界各地で展覧されました。

今回写大ギャラリーで開催の「夜明け前;20世紀末にむかって・1992~1996」展は、1993年発表の28点に加え、今年8月までに制作された未発表の作品を含めてあらたに構成されたものです。これらの作品は、先人の考案した技法(マン・レイの「レイヨグラフ」、モホリ=ナギの「フォトグラム」、瑛九の「フォトデッサン」)を複合した写真技法(細江先生によってルナ・ロッサと命名)で制作されています。個性的な写真映像が人間の手わざと銀塩写真との邂逅によってより神秘的なイメージ世界をつくりだしています。