展覧会概要

 ジェフ・デュナスはファッション写真家、写真編集者としてヨーロッパ、アメリカで活躍している写真家です。また、この作品の主人公ローラは当時から世界のファッション雑誌やビューティー雑誌で活躍していたカナダ人のファッションモデルです。ふたりは写真家とモデルとして何度も仕事をしてきました。しかし今回の写真展は二人の職業上の成果を展示したものではありません。

 1989年、ジェフは仕事の関係でカナダ人のファッションモデル、ローラ・モートンに出会いました。このときジェフはローラのなかに何かつよく魅かれるものを直感しました。ふたりは愛しあうようになりました。その年の秋、ジェフが仕事で初めてローラを撮るために、しばらくニューヨークに滞在しました。ある朝早くジェフが彼女が寝ている部屋の前を通りかかると、わずかにドアがあいているのに気づきました。彼は愛用のライカM6に手をのばし、オイスターベイを背景にして、おだやかな光につつまれたローラの平和なねむりをたった1コマ撮りました。このとき、ジェフの脳裏に浮かんだのは、妻エレノアを撮ったハリー・キャラバン、ジョージア・オキーフのステイーグリッツの写真、キキのマン・レイの写真、ビビ、レニを撮ったラルティーグらの美しい写真でした。

 その後、ジェフは世界中を巡るローラとの仕事のかたわら、写真家とモデルという職業的な立場をこえたプライベートな愛の感情でローラを撮りつづけました。ローラはまた、安心感と信頼感をもって彼のカメラに心からこたえています。ジェフはこれらの写真を、われわれ個人と呼び、“The Leica Series”と自称しています。本展は、主としてこの“The Leica Series”から構成したものです。

 ジェフ・デュナスの表現の特徴は、表現意図を明確にする能力と、美についての鋭敏な感性がくりだすクローズアップからロングショットまでの多様性に富んだカメラワークにあるといえるでしょう。