展覧会概要

 20世紀、アメリカ文化の一翼を担ってきた写真は、多くの写真家によってアメリカの風土や社会を記録し続けてきました。アメリカ社会は、時代の変遷のなかで発展と変貌を遂げつつも、その時々の問題も露呈してきました。また、写真による記録の表現形態もストレートな記録表現から自己の内的テーマとしての社会事象を独自の方法論で表現したものなど、時代とともに変化を遂げてきました。

 写大ギャラリーでは、20世紀初頭から現代まで、アメリカを記録し、表現してきたアメリカ人写真家の中から著名な5人の写真家をとり上げます。インディアンの神秘な生活の中でその美と哀感に触れて、この記録に全精力を傾け、20世紀初頭から20数年かけて20巻にもおよぶ写真集「北部アメリカン・インディアン」を出版したエドワード・カーティス。1904年、エリス島の移民収容所の記録をはじめ、国家児童労働委員会のスタッフとして全米の年少労働者の実態を撮影したアメリカン・ドキュメンツのパイオニアといわれるルイス・ハイン。1935年から国家組織F.S.A.(農業安定局)の撮影プロジェクトの一員として南部農民の生活を静かなまなざしでドキュメントしたウォーカー・エヴァンス。1956年、写真集「ニューヨーク」で衝撃的なデヴューをはかり、それまでの写真的常識を打ち破って、荒々しくも挑戦的手法で表現したウィリアム・クライン。1975年「ニュー・トポグラフィックス」の旗手として写真界に登場し、都市やリゾートの開発、廃虚と化した荒地などをクールな眼でとらえ、風景写真に新しい方向を与えたルイス・ボルツ。彼らは、写真史の上でも大変重要な位置をしめる写真家であります。

 この5人の写真家が立ち会ったそれぞれの時代社会と、彼らが強い意思のもとに記録・表現しようとした世界を「アメリカの記録」というテーマで考察してみようとする企画であります。ここに展示しました作品は、写大ギャラリーコレクションより構成しました。