展覧会概要

このたび、写大ギャラリーでは「ロベール・ドアノー展」を開催するはこびとなりました。

ロベール・ドアノー(Robert Doisneau 1912-1994)は、1930年代から約60年間にわたりパリとパリ郊外の人々をとらえた世界的に余りにも著名なフランスの写真家です。

1912年パリ郊外のジャンティイに生まれたドアノーは、小学校卒業と同時に石版画工を目指し、パリの職業学校を経て、広告制作会社に入社します。折しも広告業界は石版画ポスターから写真への転換期を迎え、ドアノーは写真部門の担当となり、本格的に写真に関わっていきます。その後、アンドレ・ヴィニョーのスタジオ、自動車会社ルノーの写真部を経て、フリーランスの写真家となります。雑誌「ヴォーグ」や「ライフ」などに写真を発表し、国際的な評価を得ていきます。

ドアノーの作品の大半はパリとその郊外で撮影されたもので、残るほとんどもフランス国内で撮られていて、彼のファイルに納められたネガは32万5千枚にも及ぶといわれています。そこには変わりゆくパリの時代とあらゆる対象がドアノーの一貫した姿勢で捉えられています。パリを愛し、パリの日常を生涯撮り続けたドアノーのユーモアとエスプリに富んだ眼差しは「市庁舎前のキス」をはじめとして数々の名作を生みだしています。またドアノーの作品には、ただ単に親近感や即解性だけではなく、人々の生活から生ずる喜びや悲しみとともに、社会への風刺や皮肉がさり気なく込められています。彼をしてヒューマニスティック・ルポルタージュ写真家といわれる所以でもあります。

ドアノーは「月並みな日常生活のなかを、その一瞬、一瞬により、人生のすべてを物語らせることができる。日常生活のなかで偶然出会う、小さな種のような瞬間をカメラにおさめ、それが人々の心のなかで花開くことを思うと大変うれしい」とオックスフォード美術館での回顧展(1992年) の中で記述しています。

ドアノーはまた芸術家や文学者との交流からモダニズムや前衛芸術に対する認識も深めていき、ピカソやジャコメッティら多くの文化人のポートレイトを撮り、ドアノーの直観的な洞察力による独特な作品をつくりだしています。

本写真展では写大ギャラリー・コレクションよりドアノーの代表的な作品50点(1932年~1968年)のオリジナル・プリントを展示します。