展覧会概要

 このたび、写大ギャラリーではウシャ写真展『未来への回帰Back to the Future』を開催するはこびとなりました。

 ウシャUsha(本名 スタンカ・ツォンコーワStanka Tsonkova)女史は、ブルガリアの現代写真を代表する女性写真家であります。彼女は1952年ブルガリア・ソフィアに生まれ、1970年代後半から写真制作活動を開始し、以後、今日まで自国を始めとして主にヨーロッパ各地で作品の発表を行っています。

 1970年代までのブルガリアの写真は、政治的にも社会的にもソ連の影響下の中で、ルポルタージュしか評価されない風潮にありました。1980年代に入り、写真家たちの一部は、社会的抑圧から逃れ、自己のアイデンティティーを示すべく、“表現の流浪者”として芸術写真の制作活動を開始します。ウシャ女史もその代表的なひとりでありました。ユニークな制作活動は1990年代に入って更に広がりをみせ、彼女は今年(2001年)になって、ブルガリア共和国から過去10年間(1991年~2000年)における最優秀芸術写真家に選出されています。

 ウシャ女史は今日まで様々なアーティストとの交流を深め、ネオ・アヴアンギャルド運動にも参加し、写真制作以外にもシネマ・アートや様々なパフォーマンス活動を展開してきています。彼女の写真作品は大胆かつ攻撃的で、常に自身にとっての新しい表現世界を追い求めています。しかしながら、そこには彼女自身の内面から湧き上がる愛、天と大地、自然と人間という聖書の精神性が一貫して根底に流れているように思えます。また、写真がデジタル時代に入り込んできた今日でも、彼女はその方法を敢えてとらずに、銀塩モノクロ写真をベースとして、合成、着色など独自の手法を駆使して表現しています。そこから生みだされた作品は、古典的なイメージと現代アート性が相まったユニークなウシャの精神世界へと昇華していきます。

 日本では今までほとんど目にすることのなかった東欧ブルガリア女性写真家の表現に、私たちは大いに刺激されます。また、ウシャさんが日本での初個展のために来日してくださいましたことは、主催者として大きな喜びであります。今回、写大ギャラリーの写真展では、1986~2000年の作品50点で構成しています。

 なお、本展開催にあたりまして、在日ブルガリア共和国大使館にご後援いただきましたことに心より感謝申し上げます。さらには、日本在住でポーランド人のマルタ・ヴアヴジニャクさんには翻訳、通訳などご協力をいただき感謝申し上げます。