展覧会概要

 このたび、写大ギャラリーでは「エドワード・スタイケン写真展」を開催するはこびとなりました。

 エドワード・スタイケン(1879~1973)は、20世紀初頭からアルフレッド・スティーグリッツとともにアメリカ近代写真の確立に大きな役割を果たしてきた偉大な写真家です。

 スタイケンは当初、19世紀末から20世紀初頭にかけてロベール・ドマシーやコンスタン・ピュヨーらによってヨーロッパで隆盛していたピクトリアリズム(絵画主義的写真)の作風の中に独自の表現を加えた作品で評価を得ていきます。その後、スティーグリッツと出会い、彼らと新しい写真の方向をめざして「フォト・セセッション(写真分離派)」の結成に参加します。スティーグリッツの主宰するギャラリー「291」では、ピカソ、マチス、ロダンらのヨーロッパの新しい芸術をアメリカに次々と紹介していきます。そして、第一次大戦(1914~18)時には、1917年アメリカが参戦すると同時に陸軍通信隊に入隊し、航空写真を撮ることになります。このこともきっかけとなり、第一次大戦後は「ピクトリアリズムからストレート・フォト」へと転換をはかり、「ヴォーグ」「ヴァニティ・フェア」誌でファッション、ポートレイト、スチルライフなどの写真を撮るようになります。彼の写真は、シンプルな構成のなかに立体感と質感を際立たせる光の演出をもって、ファッション写真に革新をもたらし、一躍写真界のスター的存在となります。しかし、1938年には、突然、ニューヨークのスタジオを閉鎖してファッション雑誌や広告の仕事をやめてしまいます。そして、第二次大戦では再び海軍航空隊に入隊し、写真班を指揮してドキュメントの写真に関わっていきます。戦後、ニューヨーク近代美術館の第二代写真部長に就任し(1947~62)、写真の収集とともに数多くの写真展の企画に携わります。その中でも、スタイケンがディレクションし、1955~57年にかけてニューヨーク近代美術館を始めとして、世界38カ国で開催された「ザ・ファミリー・オブ・マン」展は、人類愛をテーマとした大規模な写真展構成で、世界の人々に感動を与えました。今もって、歴史的な写真展として評価を受けています。

 スタイケンの写真は時代とともに大きく変容を遂げてきました。また、写真家としてだけではなく、写真展のディレクターとしてもアメリカ写真界に大きな功績を残しました。

 今回、写大ギャラリーにおける「エドワード・スタイケン写真展」は、1900年初期に撮影したフォトグラヴィアによる作品から第一次大戦後のファッション、ポートレイト、スチルライフなどスタイケンの写真家としての全盛期の作品を中心に1954年の作品まで写大ギャラリー・コレクションよりモノクローム37点を展示します。どうぞ、ゆっくりとご覧下さい。

 なお、今回展示しています作品の内、ポートフォリオ“IN THE STUDIO”“JUXTAPOSITIONS”シリーズの24点は、昨年、東京工芸大学同窓会・首都圏支部が購入されて、写大ギャラリー・コレクションへ寄贈いただいたものであります。ここに、改めて感謝申し上げます。


基本情報

会期 2001年4月9日(月) ~ 2001年6月10日(日) 10:00 ~ 20:00
会期中無休・入場無料
会場 東京工芸大学 写大ギャラリー
〒164-8678 東京都中野区本町2-9-5
TEL 03-3372-1321 (代)
地下鉄丸ノ内線/大江戸線 中野坂上駅下車 1番出口・徒歩7分
展示作品モノクロ写真作品 37点
主催 東京工芸大学芸術学部