展覧会概要

 このたび、写大ギャラリーではクー・ボンチャン写真展『In the Beginning』を開催するはこびとなりました。

 韓国の現代写真を代表する写真家クー・ボンチャンBohnchang Koo氏は1953年ソウルに生まれ、延世大学経済学部を卒業後ビジネスの道を歩みます。しかしながら、子供の頃からの芸術家への夢を実現するためにドイツに留学して、1985年には国立ハンブルグ造形美術大学写真デザイン専攻修士課程を修了します。この頃よりソウルを始めとして海外でも精力的に作品を発表していき、韓国の現代写真家として注目を浴びていきます。 クー氏はドイツ現代アートの精神性に強い刺激を受けて、従来の韓国写真からは一歩踏み出したより自由でコンセプチュアルなテーマで表現活動を展開していきます。人間に与えられた“生と死”、万物における“限りある存在”に対する意味を追い求めて、その本質を探りあてていきたいということが、作者のコンセプトには一貫して流れています。また、クー氏は制作活動のかたわら、ケウォン造形芸術大学写真学科教授を経て、現在はサンミョン大学院写真学科の非常勤講師として学生の教育にもあたっています。

 今回展示します“In the Beginning”では、男性の肉体をモチーフとして、人間の生への苦悩や不安を表現しています。その方法として、クー氏は暗室で印画紙をミシンで縫い合わせ、大きな印画紙として、そこにイメージを定着させています。重ね合わされた印画紙、縫い目、縫い糸などによって肉体のイメ-ジ上に残された傷跡は、あたかも、人生における絶え間ない選択の岐路に立って、その苦悩や束縛から逃れきれない人間の葛藤を象徴しているかのようであります。このようなクー氏独自のインスタレーションの手法が、作品に独創性と力感を与えています。今回の展示では、その他に“Flow”“White”“Breath”などのシリーズから作品を加えて構成しています。

 写大ギャラリーでは韓国写真家の個展は初開催となりますが、クー・ボンチャン氏には本写真展のために韓国より来日していただきました。これを契機としまして、日韓の写真交流が更に広がっていくことを願っています。


基本情報


会期 2016年1月25日(月) ~ 2016年3月25日(金) 10:00 ~ 20:00
会期中無休・入場無料
会場 東京工芸大学 写大ギャラリー
〒164-8678 東京都中野区本町2-4-7 芸術情報館2F
TEL 03-3372-1321 (代)
地下鉄丸ノ内線/大江戸線 中野坂上駅下車 1番出口・徒歩7分
展示作品 モノクロ写真作品 20点
主催 東京工芸大学芸術学部