展覧会概要

このたび、写大ギャラリーでは写大ギャラリー・コレクション展『アメリカの写真/表現の展開』1960’s‐1980’sを開催するはこびとなりました。

アメリカにおける写真は、20世紀前半、アルフレッド・スティーグリッツを始めとしてエドワード・ウェストン、アンセル・アダムスなどにより近代写真が開化し、ストレート・フォトグラフィーによる人物、風景、ドキュメンツ、静物など歴史に残る写真が数多くつくられてきました。

1960年以降、それまでの繊細にして重厚な写真にとどまらず、現代写真としての多種多様な表現が展開されていきます。1966年ジョージ・イーストマン・ハウス国際写真美術館でネイサン・ライアンが企画したコンテンポラリー・フォトグラファーズ展「社会的風景にむかって」や1967年ニューヨーク近代美術館でジョン・シャーカフスキーが企画した「ニュー・ドキュメンツ」展などをかわきりに、新しい写真表現の企画展が催され、現代写真の新しい写真家たちが続々と登場していきます。

その後、1970~80年代にかけても『ニュー・トポグラフィックス』『ニュー・カラー』『コンセプチュアル・フォト』あるいは『コンストラクテッド・フォト』と呼ばれるような様々な写真の流れが広がっていきます。勿論、この間も写真本来の価値観でもあるシリアス・フォトの優れた作品も多く生まれていきますが、写真家は新たな写真表現をめざして、対象そのものの描写にとどまらず、さらなる奥に潜む内的心理の追求へと向かっていきます。何気ない風景の中にも、その時代の社会や環境を問いかけ、あるいは新たな美意識を掲げて、作家自身の固有なイメージの世界へと自由奔放な精神で作品化していきます。人物のスナップ・ポートレートなどにおいても、現代社会のもつ構造的ひずみや微妙な人間心理をとらえて、作家独自の方法論で表現していきます。また、空想や幻想の非現実的世界を自ら構築して、現社会やその未来像を描いていこうとする作家も登場してきます。これらアメリカの現代写真の流れは、日本の写真界にも多大な影響をもたらしていきます。

写大ギャラリーでは、昨年11月~12月にかけて写大ギャラリー・コレクション展「アメリカの写真家・10人の眼」1900’s‐1950’sを開催しましたが、今回はこれに引き継いだかたちで、「アメリカの写真/表現の展開」1960’s‐1980’sと題して、この時代の様々な写真表現を写大ギャラリー・コレクションから企画しました。ダイアン・アーバス、ゲイリー・ウィノグランド、ラルフ・ギブソン、ドゥェイン・マイケルズを始めとして、日本では余り紹介されてない写真家も含めて22人の多種多様な作品で構成しています。