展覧会概要

 このたび、写大ギャラリーでは『森山大道展 1961~1975』―ヴィンテージ・プリントによる未発表作品―を開催するはこびとなりました。

 1938年大阪府池田町に生れた森山大道氏は、高校時代に商業デザインを学び、大阪でデザイナーとして仕事を始めます。1961年写真家を志し、上京して細江英公の助手となり細江の写真集「薔薇刑」の制作にかかわります。1964年結婚を契機にフリーとなり、森山氏自身の制作活動が始まっていきます。

 以後、森山氏の活動は目ざましく、カメラ雑誌やその他の雑誌に次々と作品を発表していきます。1968年最初の写真集「にっぽん劇場写真帖」、1972年「写真よさようなら」、「狩人」と代表作の出版が続きます。森山氏の写真は、独特な鋭敏な感性のもと、荒々しいフレーミングと画質(ブレ、ボケ、粗い粒子、ハイコントラスト)をもって、従来の写真の既成概念をも覆すような鮮烈な映像で写真界に衝撃を与え、時代の寵児となっていきます。その後、自らは「写真とは何か」という問いに苦悩しつつ、写真の根源を求め、新たな挑戦をつづけてきました。なお、森山氏には、2000年より東京工芸大学客員教授として本学学生の指導にもたずさわっていただいています。

 近年、森山氏の作品は国際的にも益々評価が高まり、海外各地の美術館で大規模な写真展が開催されています。また、今年になって、日本の美術館が企画した大規模な森山大道展が巡回されています(初期作品の多くは写大ギャラリー・コレクション)。

 写大ギャラリーでは、森山氏の初期の代表作である「にっぽん劇場写真帖」「写真よさようなら」「狩人」など、初期から1976年までの作品を当時のヴィンテージ・プリント、約1000点を所蔵しています。

 本写真展は、写大ギャラリー・コレクションより、未発表、未使用の作品を中心として、森山氏と文筆家・大竹昭子氏が初期作品シリーズの流れを一旦解体して、新たな視点で構成したユニークな企画であります。これら作品群が新たな息吹で輝きを放ち、さらなる“森山大道の世界”を創出しています。モノクロ、ヴィンテージ・プリントとともに当時の貴重なコンタクト・プリント(複写・拡大)も展示しています。なお、写真展開催にあたり、展示構成の中心としてご協力いただきました大竹昭子氏に対しまして、心より感謝申し上げます。