展覧会概要

 このたび、写大ギャラリーでは、川田喜久治写真展『Eureka 全都市』Multigraphを開催するはこびとなりました。

  写真家川田喜久治は1933年茨城県土浦市に生まれ、立教大学を卒業後、新潮社に入社して「週刊新潮」のグラビアの撮影を担当します。1959年フリーランスとなり、奈良原一高、東松照明、細江英公ら6人で写真家のセルフ・エージェンシー”VIVO”を結成して活動していきます。1965年、戦争の痕跡をたどる写真集「地図」を出版し、一躍、写真界で注目される存在となります。その後は「聖なる世界」「ロス・カプリチョス」「ラスト・コスモロジー」などを発表し、人間と社会、生と死、欲望など人間の根源的な観点から独特な表現世界を創っていきます。そして、1998年「カー・マニアック」、2002年「Eureka 全都市」と新たにデジタル・イメージによる都市へと視点を向けていきます。川田喜久治はその時代時代で表現方法を変えつつも、今日まで一貫して人間と社会を独自の視線と構成で捉えつづけています。

 写大ギャラリーでは1976年に「地図」「聖なる世界」などを中心として『川田喜久治展』を開催しています。今回は写大ギャラリー・コレクションより近作の『Eureka 全都市』を開催します。

 このシリーズは今までの写真的視線を超え、都市をテーマに時間と空間とをマルチプル・イメージによって構築しています。20世紀から21世紀にまたがるこの時代に立ち会い、なお混沌とする世界への独特なイリュージョン的都市観ともいえます。撮影地は日本のみならず世界の都市も含まれ、川田喜久治特有のグローバルな観点からの新たな視覚表現が広がっています。

 川田喜久治はデジタル・カメラで撮影、自らが画像を処理したこれら作品をMultigraphと名付け、顔料系インクジェット・プリントによるカラー作品31点のポートフォリオとして構成しています。今までにない作風と多様なイメージに圧倒される感を抱きます。