小林紀晴「はなはねに」より 2001年

本城直季「TOKYO SHIBUYA」2006年

高木こずえ「ムスコ」2008年

本展は、これまで写大ギャラリーで個展を開催した写真家の中から、本学卒業生であり、そして写真展開催当時40歳以下であった4人、小林紀晴、高木こずえ、本城直季、薄井一議の作家による写真展です。展示は個展開催時にコレクションした作品で構成いたします。

展覧会概要

小林紀晴は、2008年に「はなはねに」を写大ギャラリーにて開催しました(当時40才)。本作は、アジアそして日本での旅を一段落させた後、一年間のニューヨーク滞在中に遭遇した9.11同時多発テロ、結婚、子供の誕生、父の死など人生の転機となる多くの経験を重ねた時期に制作された作品です。撮影地はニューヨーク、東京、生まれ故郷の長野に渡り、今一度、自分自身を見つめ直す契機となった、小林作品の中でも特に重要な作品です。

高木こずえは、2010年に「MID/GROUND」を開催しました(当時25才)。この年は、第35回木村伊兵衛写真賞を最年少で受賞し、写真家として華々しくデビューした時期です。写大ギャラリーでの個展では、ストレートフォトを中心とした作品「MID」、デジタル技術を駆使した作品「GROUND」の、全く異なる手法による2つの作品を同時に展示しました。その後の活躍に繋がる、多様性を持った才能の核心を垣間見せる作品展となりました。

本城直季は、2012年に「diorama」を開催しました(当時34才)。第32回木村伊兵衛写真賞の受賞作品でもある、実在の都市やそこにいる人々をあたかもミニチュアの模型のように見せる作品「small planet」と、深夜の住宅街を大判カメラで撮影し、書き割りや舞台セットのように見せる「Light House」のシリーズを対比的に展示しました。都市を作り物のジオラマのように描き出しながら、観る者の想像力を刺激し、我々に現実世界の新たな知覚の方法を提示しました。

薄井一議は、2013年に「Showa88/昭和88年」を開催しました(当時38才)。もし「昭和という時代がまだ続いていたら?」という架空の時間軸に基づいて制作された作品です。昭和という現代とは別の時空の物語のようでありながら、実は、平成の「いま」という時代にも通底する、日本人の精神風土までをも鮮やかに捉えているように感じられます。今年11月には本作の続編「Showa92/昭和92年」が出版され、作品の世界はさらに広がりを見せています。

写大ギャラリーは、大学付属の教育施設であるため、歴史的な名作や、普段見る機会が少ない海外作品など、学外の優れた作品を学生に紹介する目的で写真展が多く開催されてきました。その中でも、とりわけ学生と比較的に近い世代の卒業生である若手作家の作品を紹介することは特別な意味があると言えるでしょう。どの作品も、写真家として、そして写真表現として、後輩となる学生たちが見習うべき点が大いにあり、また大学のコレクションとして後世に残すべきだと考えられたものです。

個性の異なる4名の作家の作品を一同に集めた本展において、本学卒業生の活躍と、写大ギャラリー・コレクションの多様性をぜひご高覧ください。

基本情報

会期 2015年11月9日(月) ~ 2015年12月22日(火) 10:00 ~ 20:00
会期中無休・入場無料
会場 東京工芸大学 写大ギャラリー
〒164-8678 東京都中野区本町2-4-7 芸術情報館2F
TEL 03-3372-1321 (代)
地下鉄丸ノ内線/大江戸線 中野坂上駅下車 1番出口・徒歩7分
展示作品 モノクロ/カラー写真作品 36点
主催 東京工芸大学芸術学部