「シカゴ」より
1959-61年
©高知県,石元泰博フォトセンター/
東京工芸大学写大ギャラリー所蔵作品

「東京」より
1953-70年
©高知県,石元泰博フォトセンター/
東京工芸大学写大ギャラリー所蔵作品

「桂」古書院二の間南面・一の間と囲炉裏の間を望む
1981-82年
©高知県,石元泰博フォトセンター/
東京工芸大学写大ギャラリー所蔵作品

展覧会概要

本展は、優れた造形感覚と透徹した美意識を持つ作品で知られる写真家 石元泰博の代表作「シカゴ」「東京」「桂」のシリーズよりオリジナルプリントを展示するものです。

石元は1921年にアメリカ・サンフランシスコで生まれ、3歳から高校卒業までを両親の郷里である高知で過ごし、その後シカゴのインスティテュート・オブ・デザイン(通称ニューバウハウス、後にイリノイ工科大学へ統合)で写真を学びます。そこでドイツのバウハウスの流れを汲む教育理念に加え、アメリカ美術の伝統も受け継いだ写真教育を受けたことで、その後の石元作品の基盤となる確固たる造形感覚を養いました。

石元の洗練された画面構成と人々への優しい視線でシカゴや東京の街を捉えたスナップ作品や、日本の伝統建築をモダニズムの視点で捉えた「桂」などの作品は、1950年代以降の日本の写真界に大きな影響を与えました。

石元は、アメリカの写真家で評論家のマイナー・ホワイト(1908-1976)に自身の写真を 「アメリカとドイツと日本が渾然一体となっている」と評されたことを受け、当初「長い間アメリカに住み、そこでニューバウハウスの教育を受けたのだからアメリカとドイツは分かるが、日本で写真の教育を受けたことはないし、意識的に写真を考えたこともなかった。 だから日本的なはずがない」と述べていました。後年、マイナー・ホワイトによる評を受け入れた上で、自身のエッセイに「その人を取り巻く風土は予想以上に、どうしようもなく、人格・感性の形成にかかわるものらしい」と記しています。

西洋と東洋、両方の眼差しを持つ石元が捉えた、シカゴと東京の街と人々、そして桂離宮という伝統建築から、写真に立ち現れる美を感じていただければと存じます。

基本情報

会期 2016年6月12日(日) ~ 2016年8月5日(金) 10:00 ~ 20:00
会期中無休・入場無料
会場 東京工芸大学 写大ギャラリー
〒164-8678 東京都中野区本町2-4-7 芸術情報館2F
TEL 03-3372-1321 (代)
地下鉄丸ノ内線/大江戸線 中野坂上駅下車 1番出口・徒歩7分
展示作品 モノクロ写真作品 44点
主催 東京工芸大学芸術学部
協力 PGI
企画・構成 吉野 弘章 写大ギャラリー運営委員長

作家プロフィール

石元 泰博(いしもと やすひろ, 1921−2012)

アメリカ・サンフランシスコ生まれ。幼くして両親の出身地である高知県に戻り、高校卒業後に再び渡米。程なくして始まった第二次世界大戦中は、日系人キャンプに収容され、そこで初めて写真に接する。戦後シカゴのインスティテュート・オブ・デザインに入学し、ハリー・キャラハン、アーロン・シスキンに師事。そこで本格的なモダン・フォトグラフィの理念と方法論を身につける。1953年、ニューヨーク近代美術館の写真部長を務めていた写真家エドワード・スタイケンの依頼により「The Family of Man」展の出品作品の調査のため日本に戻り、桂離宮を撮影。1958年、写真集『ある日ある所』(芸美出版社)を出版し、シカゴと東京のスナップショットなどの作品を発表する。同年末から1961年まで再びシカゴに滞在し、『シカゴ、シカゴ』(1969年、美術出版社)にまとめられる連作を撮影。その後も、日本の伝統美術、都市の風景、ポートレートなど、活動は多岐にわたり、常に新たな写真表現を追求した。1996年文化功労者に選出されている。