「人間の土地」
Ⓒ NARAHARA IKKO ARCHIVES/ 
東京工芸大学写大ギャラリー所蔵作品

「静止した時間」
Ⓒ NARAHARA IKKO ARCHIVES/ 
東京工芸大学写大ギャラリー所蔵作品

「Vertical Horizon」
Ⓒ NARAHARA IKKO ARCHIVES/
東京工芸大学写大ギャラリー所蔵作品

展覧会概要

奈良原一高が残した作品群は実に壮大です。今回の展示では、初期から晩年までの作品を展観し、それぞれの作品の奥にあるものを味わいながら、途方もなく広大な奈良原の世界を概観していただきたいと思います。生涯を通して撮影された作品のテーマや被写体は様々ですが、筋が1本通っていることが感じられます。

奈良原は早稲田大学大学院で美術史の研究をすると同時にフォトシリーズ「無国籍地」「人間の土地」を撮り始めました。銀座の松島ギャラリーにて初めての個展「人間の土地」を発表。大学院の学生だった頃から写真家として認められ、「王国」でさらに高い評価を受けました。その後「消滅した時間」で世界的な写真家となり、国内外の一流ギャラリーや有名な美術館などで数多くの展覧会を開催、作品集を発表するようになりました。

1975年に奈良原は東京工芸大学写大ギャラリーにおいて、「奈良原一高 静止した時間 1962-64&1973」を開催しました。写大ギャラリーでは「王国」「消滅した時間」より代表的なオリジナル・プリントを収蔵しておりましたが、この度、奈良原一高アーカイブズのご厚意を賜り、収蔵作品を一度に300点に増やすことができました。そうしたことにより、奈良原の足跡をオリジナル・プリントから俯瞰することが可能となりました。奈良原は、軍艦島やトラピスト修道院、女子刑務所などの閉じられた空間から、ヨーロッパの街並みや人々、日本の文化、アメリカの広大な自然など、生涯において幅広いものに目を向けていたことがわかります。

奈良原一高は、何を見、どこを目指したのでしょうか。作品のタイトルや、作品集のあとがきなどから、時間、宇宙、ノスタルジアなど、いくつかのキーワードが見えてきます。写真集『消滅した時間』に、奈良原は「宇宙への郷愁」と題された文章を寄せています。その中で奈良原は、自らが見た夢について「宇宙への旅立ちにあたって、人間は何を持って行くのだろうか。僕の見た夢は、何よりも写真を持って行くに違いないと、暗示しているかのようだ。」と語っています。

奈良原は2005年から長い闘病生活に入り、2020年に惜しまれながらもこの世を去りました。しかし、これからも日本を代表する写真家として、ひときわ明るく輝き続けるに違いありません。ぜひ、奈良原一高の世界をお楽しみ下さい。


奈良原 一高(ならはら いっこう, 1931―2020年)

福岡県に生まれる。1954年に中央大学法学部を卒業するが、在学中より芸術を志し、早稲田大学大学院芸術専攻修士課程に進む。1956年「人間の土地」を発表し、写真界の注目を集め、1958年に「王国」を発表。1959年、同大学院卒業、同年VIVO結成に参画。1962年に渡欧し、この頃撮影された作品を「ヨーロッパ・静止した時間」等にまとめ、写真集出版。1975年には写大ギャラリーにて写真展を開催する。1970年から74年までニューヨークに滞在し、作品「消滅した時間」を制作、国際的な評価を得る。2005年以降は療養生活を続けながらも、2006 年に奈良原一高アーカイブズを設立、作品発表・出版活動を続ける。ヨーロッパ写真美術館、東京都写真美術館を始め多くの美術館で回顧展が開催される等、国内外から高く評価されている。

〔ご来館にあたってのお願い〕

*ご入館の際にはお手数ですが会場の来館者カードをご記入いただきますようお願いいたします*

・ギャラリー内に5名入館している場合は適宜お待ちいただき、前の方が退館されてからお入りください。
・入館の際は入り口のアルコール消毒液で手指を消毒してください。
・マスクを着用し、咳エチケットにご協力ください。
・観覧中に大きな声で会話しないでください。
・「COCOA-新型コロナウィルス接触確認アプリ」のダウンロードにご協力ください。
・発熱や体調不良等の症状があるお客様は入館をご遠慮ください。

ご不便、ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解、ご協力のほどお願いいたします。

基本情報


会期 2021年9月13日(月) ~ 2021年11月20日(土)

(月〜金)10:00 ~ 18:00、(土)10:00 ~ 17:00
休館日 日曜日
入場料 無料
会場
東京工芸大学 写大ギャラリー
〒164-8678 東京都中野区本町2-4-7 5号館(芸術情報館)2F
TEL 03-3372-1321 (代)
地下鉄丸ノ内線/大江戸線 中野坂上駅下車 1番出口・徒歩7分 
展示作品 カラー・モノクロ写真作品 約60点
主催 東京工芸大学 芸術学部
企画・構成 吉田 成 写大ギャラリー運営委員長