頭塔南面中段西寄一尊坐像

飛鳥寺金堂釈迦如来座像面相詳細

三仏寺投入堂全景

展覧会概要

 本展は、写大ギャラリーに収蔵されている1200点を超える土門拳コレクションの中から、「古寺巡礼」の作品を選んで展示するものです。
 このシリーズは土門拳が1939年に初めて室生寺を訪れ、その翌年に広隆寺、中宮寺などを撮影したことに始まり、約40年に渡り撮影が続けられた代表作の一つです。途中2度の脳卒中で倒れ、右手が不自由となってからは車椅子生活を余儀なくされる中も撮影を続け、『古寺巡礼』は当初の予定に1巻加えた全5集にまとめられました。飛鳥文化に始まり平安から鎌倉文化などに渡る寺仏、庭が紹介されています。土門は『古寺巡礼』第一集(美術出版社)にて「これは飽くまでも、ひとりの日本人の、みずからの出自する民族と文化への再確認の書であり、愛惜の書であるつもりである」と述べています。
 体系づけた美術史とは異なり、独自の視点から被写体を選出し撮影しているこの「古寺巡礼」では、非常に被写体に接近したクローズアップの視点によって切り取られた鮮鋭な描写がしばしば見られます。その中には、欠損の生じた仏像や、破損し草に埋もれつつある石仏など、長い時間を経るうちにその姿に年月を刻んだものにも土門が美を見出し撮影した作品が少なくありません。『古寺巡礼』第四集では仏像の変容に関して、「亡びつつも美しさは衰えることなく、そして昇華する一瞬においても美は消え去りはしないのである」と述べていることからも、それらに向ける視線を伺うことができます。
 現在、土門拳の生きた時代からは移ろい、日本人とその文化にかかる意識ももう当時とは同じ形では存在していないかもしれません。しかし、「美しいものは、そして眼に見えるものは必ず写るというのが持論だった」とまで発言している土門拳の写真は、連綿と続く歴史の中で土門が出会った一瞬を姿形そのままに今も我々に伝えてくれます。写真の力、美しさを信じた土門の世界を作品から堪能いただけましたら幸いです。
 なお、本展覧会は、毎日新聞社が主催する土門拳賞との連携企画として、同賞の発表にあわせて毎年度開催しています。


土門 拳(どもん けん, 1909―1990年)

1909年山形県酒田市生まれ。中学時代より画家を志すが、家の事情で断念。1933年に営業写真館である宮内幸太郎写真場の内弟子となるが、報道写真家を目指し、1935年、ドイツから帰国した名取洋之助が設立した日本工房に入社。戦後は絶対非演出の「リアリズム写真」をカメラ雑誌などで提唱し、写真界に大きな影響を与えた。1958年に写真集『ヒロシマ』(研光社)を刊行、国内外で高い評価を得る。筑豊炭鉱地帯の窮状を取材した1960年刊行の写真集『筑豊のこどもたち』(パトリア書店)は10万部を超えるベストセラーとなる。その後、仏像や寺院、古陶磁などの伝統工芸品や風景など、一貫して日本を撮り続けた。

〔ご来館にあたってのお願い〕

*ご入館の際にはお手数ですが会場の来館者カードをご記入いただきますようお願いいたします*

・ギャラリー内に5名入館している場合は適宜お待ちいただき、前の方が退館されてからお入りください。
・入館の際は入り口のアルコール消毒液で手指を消毒してください。
・マスクを着用し、咳エチケットにご協力ください。
・観覧中に大きな声で会話しないでください。
・「COCOA-新型コロナウィルス接触確認アプリ」のダウンロードにご協力ください。
・発熱や体調不良等の症状があるお客様は入館をご遠慮ください。

ご不便、ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解、ご協力のほどお願いいたします。

基本情報


会期 2022年4月11日(月) ~ 2022年6月1日(水)
開館時間 10:00〜19:00
休館日 木曜日、日曜日、2022年4月29日(金・祝) 
入場料 無料
会場
東京工芸大学 写大ギャラリー
〒164-8678 東京都中野区本町2-4-7 5号館(芸術情報館)2F
TEL 03-3372-1321 (代)
地下鉄丸ノ内線/大江戸線 中野坂上駅下車 1番出口・徒歩7分 
展示作品 カラー・モノクロ写真作品 約60点
主催 東京工芸大学 芸術学部