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フォックス・タルボット「自然の鉛筆」1844年

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ウィン・バロック「森の子ども」1951


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土門拳「るみえちゃんとさゆりちゃん」1959


展覧会概要

 東京工芸大学は、本年2023年に創立100周年を迎えます。これを記念して、写大ギャラリーのコレクションから、写真の誕生した19世紀から現在に至るまでの、魅力的で多種多様な作品を100点選出して展示いたします。

 東京工芸大学は、我が国で最も歴史と伝統のある写真教育機関です。写真器材商だった六代杉浦六右衞門は、写真の技術者や研究者を養成するとともに、社会における写真の普及や発展のため、高度な写真専門の教育機関を設立することを唱え、その志を継いだ七代杉浦六右衞門により、1923年に東京工芸大学の前身となる小西写真専門学校(旧制専門学校)が創立されました。工学的な要素と芸術的な要素を持つ、当時の最先端メディアであった写真を原点として、創立当初よりテクノロジーとアートを融合した教育と研究を行い発展してきました。

  1975年には、日本で本格的に「オリジナル・プリント*」を展示・収集する、当時では先駆的な施設となる写大ギャラリーを設立いたしました。本学の教授に就任する際にギャラリーの設立を提案した写真家・細江英公は、写真教育の現場でこそ、「写真の素晴らしさ」「写真への愛と尊敬」を語る上で最も効果的な教材として、作品を活用すべきだと主張しました。

(*写真家自身により制作され、署名などが入れられた、写真家の最終的な表現媒体としてのプリント)

 設立以降、写大ギャラリーでは写真作品の展示と収集を行っており、現在は1万2千点を超えるプリントを所蔵しています。コレクションは、W.H.フォックス・タルボットやナダールのような19世紀の歴史的作品に始まり、20世紀の著名な作品、昭和を代表する巨匠である土門拳や木村伊兵衛のほか、世界的に評価の高まっている森山大道の貴重なヴィンテージ・プリントなど、多岐にわたっています。また、創立時に教鞭をとった小野隆太郎や、本学卒業生であり写真家として初めて文化功労者に選出された渡辺義雄など、東京工芸大学 写大ギャラリーならではの作品も数多くコレクションしています。

 光は触れることも留めておくこともできませんが、写真はそれを形にして残すことができます。写真を介して我々は、100年前の光にも接することができます。

 写真家たちは光を捉えるために、その受け止め方をさまざまに模索してきました。多様なカメラや感光材料、技法が展開され、時には、太陽からもたらされる自然光だけでなく、人工光を開発し、光を作り出し操りながら作品を残してきました。そうしてまた、写真によって実現することになった過去の光に触れること、それにより、また新しい写真の表現が誕生してきました。写真の表現の変遷は、形を与えられることで可能となった、光の蓄積の歴史なのです。

 写大ギャラリー・コレクションの選りすぐりの作品を通じて、写真家たちが今に伝える光、連綿と続いてきた写真の表現、そして写真のこれからをも思索する機会になればと存じます。

 

 〔主な出品作家〕

ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット、エドワード・ウェストン、ポール・ストランド、ウィン・バロック、ロベール・ドアノー、木村伊兵衛、渡辺義雄、土門拳、東松照明、川田喜久治、細江英公、森山大道ほか


基本情報

会期
2023年4月10日(月)〜 2023年6月1日(木)
開館時間
10:00〜19:00
休館日
木曜日、日曜日、祝日

*ただし2023年6月1日(木)のみ開館

入場料
無料
会場
東京工芸大学 写大ギャラリー
〒164-8678 東京都中野区本町2-4-7 5号館(芸術情報館)2F
TEL 03-3372-1321 (代)
地下鉄丸ノ内線/大江戸線 中野坂上駅下車 1番出口・徒歩7分
展示作品
カラー・モノクロ写真作品 100点
主催
東京工芸大学 芸術学部