展覧会概要

 このたび、写大ギャラリーでは中谷吉隆「写真一直線 ―10代/20代の残像― 1954~1964」を開催するはこびとなりました。

 写真家・中谷吉隆氏は、1937年広島市に生まれ、東京写真短期大学(現 東京工芸大学)で写真を学び、1957年写大卒業後、東京新聞社出版写真部嘱託となり、雑誌「週刊東京」に当時の世相を鋭いまなざしでとらえた写真を掲載していきます。1960年にはフリーランスの写真家となり、カメラ雑誌、グラフ雑誌ほかの雑誌メディアを中心としてルポルタージュ、人物、スポーツなど幅広い分野を手がけ、次々に作品を発表していきます。中谷氏の代表作のひとつでもある「道東-オホーツクと原野と湖と」は1975年朝日新聞社より出版されます。1964年、東京オリンピックの取材をきっかけに、それ以後スポーツ写真にも情熱を注ぎ、スポーツにおける瞬間美と力感に満ち溢れた作品を発表していきます。今日ではスポーツ写真の第一人者として、高い評価を得ています。

 今回の写真展では、中谷吉隆の長年にわたる制作活動の中から10代/20代にかけて、写真一直線に全速力で向かっていった若き時代に焦点を絞って、モノクローム87点を展示します。その内容は、写大時代に郷里である原爆都市広島の戦後10年の姿をとらえた「広島」1954~1957を始めとして、「週刊東京時代」1957~1960、「60年安保ほかグラフジャーナル」1960~1966、「トカラ列島」1961、「蒼氓-南米ボリビア移民」1963、「東京オリンピック」1964、で構成しています。

 この写真展では、学生の皆さんが中谷氏の若き時代の写真への情熱とその成果を、また、ご来場の皆さまが今回の作品をとおして、この時代をそれぞれの眼で感じ取っていただければ幸いです。